作事組全国協議会 総会 2014 in宮津
京都府宮津市
平成26年10月11日(土)、12日(日)、宮津市街地にある旅館『清輝楼』の大広間及びみやづ歴史の館を主会場として作事組全国協議会の総会及び報告会が開催されました。
2年に1度開催される総会も4回目を迎え、今回は全国各地から82名が参加し、宮津の歴史的経緯、町並みの構成、取り組み、今後の課題などの報告を受け、その後、「町人・武家屋敷界隈コース」「北前船・漁師町界隈コース」「花街界隈コース」と三つの分科会に分かれ、町歩き、意見交換会等を行いました。
意見交換会では、宮津町家の特徴や他の地域との違い、現状の問題点、今後の活用への課題等が話し合われました。
初日の夕方には清輝楼の大広間にて大懇親会が開催され、技術者、設計者、行政関係者、学生と様々な人たちの間で立場を越えた賑やかな議論・交流が行われました。
翌日には「伝統家屋の法制度をめぐる最新の状況報告」及び、各分科会の報告や総括が行われ、次回(再来年)開催予定の兵庫姫路を拠点とする「姫路・町家再生塾」から挨拶がありました。
午後からは「海の京都見学会ツアー」を企画として重要伝統建築物保存地区の伊根の舟屋群を見学、その後バス移動し同じく重要伝統建築物保存地区の与謝野町加悦ちりめん街道を見学しました。
宮津の伝統建築や文化に触れ、多く残る町家を今後どのように改修し、活用していくか、期待と展望の沸く2日間となりました。
第1分科会
会場の今林家まで、カトリック教会の陰に隠れている聖アンデレ教会、改修を待ちわびるコルビジェ風の市役所、唯一残るとされる武家屋敷、城門や長屋門、カトリック教会、和気宮神社、京街道沿いにびっしり並んだ町家が都計道路の拡幅で一掃された中でかろうじて残った洋館建ての病院及び改修活用事例の桜山長屋と見学して廻り、和火(やわらび)イベントに協賛して山車が展示された桜山天満宮を抜けてたどり着いた。
分科会のテーマは「町家活用と再生手法—」であり、まず八女福島の取り組みが中島さんからPP.を使って報告され、町家の救済や利活用のための資金調達やテナント探しをするために、市民、行政、専門家ごとの組織と協働のしくみを作って取り組んでいる、とのことであった。次いで各地の取り組みが紹介されたが、見学を通した宮津の感想を求められ、出席者から地蔵の祠がよく手入れされていて生活感が感じられた、外に開かれた感じの町、市民による保存運動に感心した、などであった。姫路(坂之上氏)からはサロンやコンサート会場などの利用、加悦(上田氏)からは生活空間であることを尊重(観光地ではない)、少子高齢化もあって空き家やその予備軍が多い、旧丹後銀行の保存でNPOを立ち上げたが、八女に比べ行政の熟度が低く期待できない。川越(野本氏)からは一番街商店街の景観を中心に活動、生活の場であることを基本に(観光目的は前面化しない)、街並み規範を作った(街並み、建築、看板など60項目)、街並み委員会でアドバイス(市が事業者に事前に委員会のチェックを受けることを示唆)、問題は全国ネットの事業者の進出、後継不足、シャッター街化、ハイオクの存在など。鹿野(小林氏)からは緒に就いたばかりなどの報告がなされた。
後のコンサート開始が迫り時間が限られ、意見交換が充分できなかったが、加悦や川越が挙げた状況は各地共通の課題であることが明らかになった。
最後に座長で臼杵の斉藤さんから、宮津への助言として、立派な町家だけでなく、普通の町家を直して活用することが市民へのアピールとして有効だとの発言で閉めた。
第2分科会
第?分科会には33人の参加者があり、元花街であった新浜地区、漁師町界隈、北前船で栄えた商家町を日向進先生や宮津市の河森氏のご案内で見学しました。港町らしく総二階の町家にはセガイ造りの小屋組も見られ、1階の出格子に腰壁が付き屋内化されていること、2階の窓に庇が付くこと、2枚ホゾの仕事が好まれていることなどが京都の町家との違いでしょうか。幹線道路から一筋入ると昔からの町並みが多く残っています。最後に旧三上家住宅を見学し、そこで意見交換会を行いました。「宮津町家は存在するか」が座長に与えられたテーマです。武藤氏からは、金澤では町家の定義は立地、商い、造築年、工法によってある程度カテゴライズされているお話がありました。京町家も同様ですが、大店と借家、築造時期、用途によって種類にかなりの幅があります。宮津でも、花街も漁師町も商家もひっくるめて宮津町家と呼んで良いのではとの結論になりました。八女の北島氏より、そろそろ町並み保全に向けた制度設計に取り組んではとの指摘がありました。また臼杵の荻野氏からは、三上家の欅材が北前船で運ばれて来た可能性について指摘がありました。
第3分科会報告
第?分科会は市内町並み見学の後、桜山ナガヤカフェに隣接するイベントスペースで行われた。間口3間奥行5間の2階5棟が連続する長屋の端から2軒をカフェとイベントスペースに利用している所である。店主の羽田野まどかさんが着物姿で出迎え、解説してくれた。参加人数は約30名。手作りのタタキ土間の上に座長宗田先生と、ゲストスピーカーを円く囲む。テーマは、今、地方創生で話題になっている空家対策についてである。現在我国全体で820万戸にも及ぶ空家問題について全国各地でどう対処すべきか?それに立ち向かうプロジェクトのある所には、常に勇気ある女性がいるとして、この長屋カフェの経営者と共に、大分県で町家を再生し、地域の人々の交流の場として、「くど市」を開催している梶原純子さんが自らの体験を話してくれた。他に、西舞鶴の商店街で空町家を所有者から無料で借り受け、ギャラリー兼店舗に再生した工務店の若社長の試みや、旧加悦町で無住の古民家を持主から解体費を供出してもらって重伝建の助成金をあわせて修理運営を企てる天橋作事組の宮田氏の話等が紹介された。その後参加者全員が意見を述べ合い、分科会は終了した。
その夜町にでると、通りに何万個ものあかりが灯され、山辺の神社や寺の境内で市民が集いそぞろ歩きをする「和火(やわらび)フェスタ」が催され、久々に生き生きとした町衆と町並みが蘇った感があった。日中宮津の町家はシャッターをおろした店が多いが、各所にしっかりと存続し、再生の機会を待っている印象を覚えた。
翌日は宮津港より観光船で海から接近する伊根の舟屋めぐりをし、そこからバスで丹後ちりめん街道の旧加悦町の町並み見学をし、とても素晴らしかった。案内していただいた日向進先生や天橋作事組の皆様に感謝する次第です。